岩手県平泉、宮城県の木質バイオマス活用の先進地域での視察報告
2013.11.30
去る11月19日、世界文化遺産平泉に視察研修に行ってきました。
目的は、世界文化遺産登録から3年たった現在の平泉の様子を確認することと、
富士山でも同じく課題となっている保存管理計画についてなどについて
平泉文化遺産センターの菅原主任にヒアリングしてくることです。
平泉に到着して、景観が配慮された駅舎が非常に美しいことに驚きましたが、
震災被害があったことと文化遺産登録が重なって、現在改修が進んでいるとのこと。
JR東日本が再生可能エネルギーによる駅舎の運用を目指して
取り組みはじめた「エコステ」のモデル駅なのだそうです。
地域の資産の保全に配慮したインフラの整備、といったところでしょうか。
平泉文化遺産センターでは、お忙しいところを2時間近くもヒアリングに
お付き合いいただき、様々な視点を気づかせていただくことができました。
特に印象的だったことは、抱える課題が富士山と似ていること。
「浄土」や「富士講」といった極めて日本独自の文化と、
ごく当たり前に一般住民が暮らしている地域の構造が密接に融合されている、
「(将来に対して)開発ではなく守り続けるためのまちづくり」を
世界遺産として問われていることに気がつくことができました。
次に、当財団で木材有効活用事業として現在研究している木質バイオマス活用について、
先進的な取り組みをされているNPO法人「日本の森バイオマスネットワーク」の唐澤事務局長に
様々な事例紹介をしていただくため、宮城県に移動しました。
小規模・低コストによる自伐林業方式による管理を進めている「エコラの森」、
木材の燻煙処理から製材後の鉋屑(かんなくず)の木質ペレット化まで、無駄なく丁寧な木材利用を
すすめている「株式会社くりこまくんえん」、間伐材等を有効活用する方法としての「組手什(くでじゅう)」、
こうした森林整備と利活用の取り組みを有機的につないでいる日本の森バイオマスネットワークのしくみ、
薪ボイラーやペレットストーブを使いながら、快適な自然体験活動をこの地域で展開する活動拠点となっている
「くりこま高原自然学校」、そしてこのネットワークが中心となって、被災地の子どもたちを支援するための、
自然再生エネルギーをフル活用した「手のひらに太陽の家プロジェクト」。
どれも非常に刺激的で、あっという間に研修は終了してしまいました。
平泉の木像にしても、木造建築にしても、宮城の木質バイオマス活用の取り組みにしても、
日本の最大の文化的特徴である「樹木の活用」に包まれっぱなしの3日間の研修でした。
特に木質ペレットに関しては、研修後にさっそく栗駒のペレットを購入させていただき、
現在事務所内のペレットストーブで利用させていただいております。
この富士山麓での木質バイオマス普及を、どう進めていくことができるのか、研修後毎日のように考えています。
今回勉強させていただいたことは、そのわずかでも富士山麓でも上手に真似しながら、
取り入れていきたいと思いました。
富士山の樹木の恵みを使わせていただくという気持ちを、新たな形で継承していくために。
この度の研修でお世話になりましたすべての皆様に、厚く御礼申し上げます。
研修者:舟津宏昭