
富士山自然観察会を実施しました!
2025.7.25
去る7月19日、富士山生物多様性研究室の渡邊通人先生を講師に招いての「富士山自然観察会」を今年も実施しました。
ここ数年は、財団が現在実施している整備森林と梨ヶ原草原との自然環境の違いについて学ぶ観察会を開催しておりましたが、今年は2013年から5年間実施した元整備森林での観察会を初めて企画いたしました。
元整備森林へは滝沢林道から細い林道を入り約1㎞ほど進みます。途中、左右に広がる森林は、アカマツの人工林とカラマツの人工林で、地表に差し込む光の量はカラマツ林の方が多いとのことから、それぞれの林間の植生に違いがみられるお話や、道すがら見られる特徴的な樹種や植物などを適宜説明していただきました。
1時間弱歩行し、元整備森林に到着。
2013年から5カ年に渡り広葉樹を植栽した森は、約10年が経過し樹高も見上げるほど大きくなっておりました。今まで歩いてきた森林から一気に光が差し込み、下草も旺盛に生育しています。その旺盛な草地では蝶を何種類も観察することができました。観察出来た蝶を講師の先生から1つずつ丁寧に解説していただきました。
また講師の先生には、2年前から実施している元整備森林での蝶類調査結果について資料を基に説明いただき、1年間で44種類もの蝶が確認できたとのことでした。これは他の6つの調査区と合わせた7つの調査区の内2番目に多く、いかに植栽後の草原環境が沢山の蝶が生息できる環境であることをご説明いただきました。また1㎞ほど離れた梨ヶ原草原との間で蝶の行き来があるそうで、元整備森林と梨ヶ原草原とで生育地を補完しあっているとのお話でした。
また今回は観察できませんでしたが、他の時期には絶滅危惧種や準絶滅危惧種も6種確認できたとのことです。
今回観察できた蝶は、スジグロシロチョウ、アサギマダラ、ホシミスジ、ジャノメチョウ、モンキチョウでした。また珍しく昼間に活動する蛾としてベニモンマダラも観察することができました。
最後にまとめとして参加者全員より感想をいただきました。「初めて蝶に触る体験ができて感動した」「調査データをもとに説明していただいてとても勉強になった」「普段植物に関心があったが、蝶をメインに観察することは初めてだったので視野が広がった」などなど。
また講師の先生より「皆伐して植栽をし育て皆伐をするという林業のサイクルが、多様な自然環境を作りだし、その自然環境に適する動植物の棲息地を作りだすことに貢献をしている」というお話をいただきました。林業という一次産業が貢献をする多面的な機能「生物多様性の向上」について改めて学び実感できた機会となりました。