粟井英朗環境財団|富士山自然観察会を実施しました [ 新着情報 ]

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富士山自然観察会を実施しました

2022.8.8

8月7日、富士山自然観察会を実施しました。

今回は講師として富士山生物多様性研究室の渡辺通人氏を迎え、財団が地権者と進めている整備森林と、梨ヶ原草原の2カ所にて植生と蝶類相の違いについて観察をしました。

 

富士北麓標高1,100mに位置する整備森林は、2019年より地権者と財団とで水源涵養機能向上を目的とし整備をすすめています。雨の浸透力を上げ、樹冠遮断による蒸発と植物による蒸散を抑えるため、除伐・間伐・草刈作業を実施しています。

 

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まずは整備前の森林の様子を観察しました。低木層が旺盛に生育している状況が分かります。

 

 

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続いて、整備後の森林に移動し、草刈を継続して実施している区画と、除伐・間伐後はそのままにしている区画とを比較をしました。

①整備前森林②整備後草刈あり③整備後草刈なし、の3区画にて昨年の6月と8月に講師が実施した植生調査の結果、②整備後草刈あり森林に見られて、①整備前森林に見られない種が62種あったとのことで、除伐・間伐・草刈作業により、草木層が豊かになったことを説明していただきました。また整備後草刈をした区画に出現した種は整備後草刈をしなかった区画に比べ21種あり、草刈によって草木層の多様性がさらに高まる、という考察をいただきました。

 

 

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続いて、梨ヶ原草原に向かいます。普段は北富士演習場として使用されており立入出来ませんが、立入可能日を確認し、富士吉田市外二ヶ村恩賜県有財団保護組合への入山許可、入会住民以外の鑑札料支払いの手続きを経て、日本を代表する草原での観察会を進めました。

日本の温暖で降水量の多い気候の場合、ほとんどの緑地は数十年で森林に遷移します。梨ヶ原草原は毎年4月に行っている火入れにより草原環境が維持され、国内で草原が激減する中にあって、広大な敷地に希少な動植物が生息しています。

草原内1ヵ所目の場所では、環境省絶滅危惧IB種のヒメシロチョウを何頭も観察できました。

 

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草原内2カ所目の場所では、キキョウやオミナエシといった秋の七草やコウリンカ、バアソブなどを観察しました。

 

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観察会終了前に、講師よりまとめのお話を伺いました。

整備森林と梨ヶ原草原の植生を比較すると、前者には124種の植物が、後者には87種の植物が昨年の調査で観察されましたが、双方に共通して確認された種は少なく、それぞれの環境に合った種が生育していること、そして絶滅危惧種は前者には1種、後者には5種と、草原環境の希少性も分かりました。また蝶類では梨ヶ原草原にのみ絶滅危惧種が8種も確認されたそうです。

ほどんとの参加者が梨ヶ原草原に初めて入ったということですが、「火入れは良いイメージをもっていなったが、今回の観察会で見かたが変わった」「人の営みととも維持された素晴らしい環境をこれからも残していきたい」「データをもとにお話をしていただきとても勉強になった」など感想をいただきました。

 

 

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富士山麓は標高差もあり、溶岩流の流れた年代が異なったり雪代による攪乱などにより、多種多様な自然環境に恵まれています。そこに造林作業や火入れ慣習など人為的な行為が加わることで、さらに環境条件が幅広くなり微妙に変わってくることで、豊かな生態系が構築されています。

身近な自然に親しむことで、麓に住むわたしたちの癒しや楽しみになったら素晴らしいとことと思います。

 

 

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