富士山水資源講座【野鳥編】を実施しました
2022.6.21
去る6月18日(土)、当財団が地権者と共に進めている整備森林を会場に「富士山の水源の森に生息する野鳥」をテーマとして、東京大学大学院 特別研究員 水村春香氏 を迎え講座を実施いたしました。
今回は屋外での観察会と、屋内での座学を組み合わせ実施しました。
まず集合場所とした整備森林内(以下水源林)で野鳥のさえずりを3分間聞きとりました。
当日はエゾハルゼミの声が大きく聞き取りづらかったものの、 アオバト/ノジコ/エナガ/キビタキ/クロツグミ/ヒガラ/ホオジロ/ウグイス/コゲラ の9種を確認できました。
講師がこれまでに調査をした結果、29種を確認することが出来ているそうです。
道を挟んで隣接する整備前の森林内では、よりセミの声が響いているものの、多くの鳥のさえずりを確認できました。
水源林から約800m離れたアカマツ林に場所を移動し、同じく3分間さえずりを聞き取りました。
こちらでは ヒヨドリ/キビタキ/ハシブトガラス/ホトトギス/アオゲラ/ウグイス/イカル/ソウシチョウ の8種を確認できました。
講師の調査ではこれまでに20種を確認したということです。
水源林とアカマツ林で行った比較調査した結果、水源林のみで確認できた種は12種、アカマツ林のみで確認できた種は1種で、除伐・間伐・草刈の人の手が加わり地表に草地のある水源林では、森林性の種に加え、疎林や草地を利用する種が増えた、との考察でした。
その後、会場を山梨県富士山科学研究所小ホールに移し、座学による学習会を開催しました。
講義の前に、財団より水源林の概要について説明をしました。水源涵養機能を高めるために①林内を明るくして下草や樹木の根を発達させ、雨の浸透力を上げる②除伐・間伐によって樹冠遮断による蒸発量を減らし、林床まで直接届く雨の量を多くする③除伐・間伐によって植物量を減らし、葉からの蒸散量を少なくする、この3点をポイントとして整備を進めています。
水村氏からの講義内容は大きく分けて3つ ①観察会のふりかえり ②水源林の野鳥の研究 ③鳥がつくる音の効果 で構成されました。
①観察会のふりかえりでは、屋外でヒヤリングをした野鳥の写真とさえずりの音声とを合わせて復習をしました。さえずりは、主に小鳥のオスが繁殖期に発する鳴き方で「ホーホケキョ」などフレーズがあるのが一般的です。春から初夏にかけてがもっとも鳥のさえずりが聴ける時期です。
富士山麓は、多様な標高多様な森林があり、多くの森林性鳥類、特に夏鳥の繁殖にとって重要な場所です。
②水源林の野鳥の研究については、水源林とアカマツ林で行った比較調査の方法について説明いただきました。5月中旬から6月下旬の早朝、それぞれの林の定点で20分間、その周囲で見聞きできた鳥を記録したそうです。
間伐や草刈りを行うことで疎林や草地を利用する鳥の種類が増え、種の多様性が高まったのではないか、というお話でした。
また、③の鳥がつくる音の効果では、水源林とアカマツ林で録音した音声を聞き、どちらがより癒されるかを参加者に聞きました。半々に分かれましたが、水源林の方が癒される、という方がやや多い結果でした。ちなみに、水源林では5種、アカマツ林では2種の野鳥のさえずりが録音されていました。
講義の後、参加者からの質問、感想などをいただきました。
「多様な環境が多様な種の生息に役立つことを学んだ」「伐採によって失われる生息地もあれば、草地を好む種にとっては貴重な生息地になるので、様々な生育環境があるように管理を回していくことが大切と思われる」「毎年の火入れによって草原が保たれている梨ヶ原は、地質的な特徴やその広さだけでなく、立ち入りが制限されていることで安心して鳥が生息できるという面もあるのでは」
最後に講師より「都会では観察会などのイベントが多い。地方でももっと学ぶ場があったらよいと思う。森林も草原も人による管理で維持されるものがほとんどなので、その価値を知ることが需要。特に地元の若い人に価値を知って欲しい。」との締めの言葉をいただき、閉会といたしました。
今後も専門家を講師に招き、自然観察や研究内容を知る機会を作ってまいります。ご参加をお待ちしております。